昨日関東では雪がふるかもしれないという噂が飛び交い、台湾の人も興奮して眠れなかったそうですが、結局空振り。
降ってはいたそうですが、積もらなければマそういう反応になります。
新年を思い出しました。
朝起きたら、昨日帰省した瞬間に私を出迎えた雪が、一面に積もっている。
二階から寒気に顔をさらし、やっちまったな!という感じで銀世界を眺める。
私の実家は昔山だったところに建っているもので、二階からなら、下界たるはるか駅周辺が見下ろせる。
実は二階から、自転車で50分いった先の母高校までみえる始末である。
一年ぶりの雪をみて、晴れ晴れしい心地がしたのもつかの間、一階から雪かきをしろとの指令が飛ぶ。
朝食たる雑煮は、除雪の後支給されるものと見える。
しょうがないので、ダウンジャケットを着る。手袋をはめる。毛糸の帽子をかぶる。
これはただでさえ日々鞭撻を加えねばたちまち奇妙な形に変形を遂げる私の毛髪をヤッと掛け声をかけて平らにのしてしまうので、あまり好きではない。
だがそれなしでは耐えられぬ寒気である。
陽光は暖か、白く心地よい風花の我を迎えるを肌身で感じつつ、裏庭に移る。
裏には両親が丹精こめて育てた奇妙な顔をした野菜が育っているばかりであるが、それを過ぎると倉庫がある。
尋常のころそこに潜む猫の仔を発見したのも懐かしい思い出である。
倉庫を開けて手を突っ込み、雪かきシャベルを引っ張り出す。
関西などでは雪かきをしたことがない、という同輩もいるようである。
そういった家々にはこういった道具は揃えていないであろう。
道具を引きずり引きずり、正面出口へ移動し、敷地から出掛かるところへ、母の声が追ってくる。
なんでも我が家の前だけでなく、向かいのN家、左隣のN家、さらにむこうの駐車場の前までareaを拡大して除雪に努めよとの仰せである。
さらに言葉を続けていうには、その駐車場の隣にはお前も知ってる通りT家がある。
そこの主人はもう60を過ぎるというのに、雪が降った朝には誰よりも早くおきだして家の前の雪を撤去する。
それもただどけるのではない、まさに道路の両脇にある白線の外側まで完璧に雪をして後退せしめるのは近所でも有名である。
故に彼の家の前の道路は、アスファルト地が明確に見えたること鏡の如し。
よってお前は、我が家の前、N家の前、そして駐車場の前と進み、その隣のT家の完璧たる跡まで綺麗な面を持続させねばならない、と法外な注文をする。
これはつまり、近所3軒分に相当する雪かきを、T家の主人の如き手前を持って完遂せよという事である。
しかたなく家の前に出て、左に目を転じる。
背にお天道様を浴びるため、先の様子がよく見える。
すると予想にたがわず、T家の前の地面は灰色である。
これは本来の色としては黒なのだが、未だ雪がちらりほらりと降り続けており、その表面に若干の薄化粧を施しているため、灰色に見えるのである。
いずれにせよ、T主人の仕事の跡は明らかである。
シャベルを振るう。
やわらかい雪肌に突き刺さる。
久々の白い重みが、身体に染み入る。
ただ靴はこれを予想して米軍製ブーツであったので、水が染みる危険は全くない。
除け除け進みながら、ふと隣のN家のことを思ってみる。
N家といったが、実は元N家であり、今は住民の苗字すら知らない。
だがN家だったころに住んでいた爺さんが優しい人であったのが記憶に新しい。
この爺さんは動物が大好きな人物で、我が犬などもよく懐いていた。
彼は口笛でトビを呼び、これにエサをやるほど動物に好かれる。
犬のことで思い出したが、我が家の犬のテリトリーは不必要に広い。
我が家に訪問者があると、これに向かって吠える。
それはいいのだが、隣のN家に客があっても、爺さんを好いているからこれにもまた吠える。
反対側の家の主人はよく散歩の連れて行ってくれた好人物のため、この家に不審と見る人影を認めると、これに吠える。
当然向かいのN家もよく目に入るためか、とりあえず吠える。
挙句の果てには、裏の家の玄関を叩く音がすると、わざわざ裏に回ってこれに吠える。
裏の家にはどのような義理があるのかは知らない。
私も特に彼女に問いただしもしなかったので、ついに現在まで知らぬままである。
言ってみれば四面楚歌を自分で歌ってみるようなもので、すこぶる奇観であった。
それに隣のN家にはもう、年をとってもなお矍鑠としていた犬がいたのである。
客来訪時これも吠え、我が家の犬も吠えるので、この家に人が来ると察するのに時間を要しない。
ついでにいえばこの隣の犬は、いわゆる変犬である。
この家には正方形に近い平面を持つ庭があり、それが道路に面しているのだが、彼女は暇さえあればこの庭を囲む外壁にそって庭を円形に疾走する。
それも一周ではない、気が済むまで何度も何度も挑戦して回る。
陸上選手のような規則正しい鼻息が聞こえるから、それやったと思ってみると、思ったとおり庭の中心を支点にして、しきりに1つの大きな円を画して居る。
その結果、当然といえば当然であるが、地面は外壁にそって深くえぐれ、円形の堀が完成しているのである。
私は昔庭に深く穴を掘って宝を探していたのが、ついに水道管を掘り当てたことがある。
そこまでやれば大した努力だと思うが、どうも彼女の方が士気が上である。
今なお、この堀が残っているかどうかは不明である。
ようやく除雪を終える。
例のT家前の鏡のような地面まで繋げる件であるが、これはさすがに骨が折れるため、結果として私のareaからだんだん雪の層が薄くなっていき、ちょうどグラデーションを描くように、最後は極限まで薄くなってT家の前に到達させることとした。
うまくつながったと思う。
粉雪が、この細工の跡を隠すであろう。
これも一種の「マスキロフカ」である。
この度は、そのまま温泉で年を越す。
よくよく話を聞いてみると、まだ一回両親と会ったきりの二番目の姉のボーイフレンドが一緒にくるというので驚いた。
もちろん久々に帰っていた姉も来る。
両親が是非にといって、決定したそうである。
よくもまぁ新年の温泉旅行に一度しか会ってない娘の彼氏を引っ張り込むものだ。
もっともこの方はだいぶ面倒見のよさそうな好人物であるから、特に問題はないが。
しかし、この年になっても両親の思考回路は読めないままである。
最近のコメント